コンドミニアム・アセットマネジメント(Condominium Asset Management/CoAM)という概念は端的に「区分所有建物(マンション)であるが故に生ずる不安定性」を「なんとかする(マネジメントする)」ことを目的に生まれ(作られ)ました。
1.不動産バブルの崩壊(不動産評価の課題)
1990年の株価下落から派生した不動産価格の下落は、「バブル」と表現されるだけあって、実態に即していない資産価値評価(狭義)に起因している部分が否定できません。土地がどんどん値上がってしまい、賃貸に出しても借り手がいない、賃料収入が期待できないような物件に対して、期待だけで過分の価格がついてしまった・・・というのが実際です。
「景気は気分」よく言われる言葉ではありますが、まさにその「気分」に抗えず、俗に言われた不動産「ババ抜き」が始まってしまったのです。
2.マンションにおける不確実要素(不動産管理の課題)
土地や一戸建て、ビル等であれば、その構成要素はシンプルに「土地」と「建物」です。そして前述の「ババ」なのかどうかは、マーケット分析とそれに見合ったどのアクションを行うのかを、費用対効果を見て考えれば、そのストーリーが見えてきます。
しかしながら、マンション(区分所有建物)は複数の所有者が一つの屋根の下で建物共用部分を「共有」し、それを管理するという不動産所有形態です。そのため単独所有に比して制限も多く、また戦略決定が円滑にいかないケースもありえます。そして、多数決により常に「合理的」な決定がなされるとは限らない状況もありえ、また、それが大きなリスクとなりえます。(もちろん何が「合理的」かであるという定義付について難しい課題はあります。)そして、そのリスクが顕在化することにより、じわじわとその資産性が蝕まれ、最終的には様々な観点から存続し得ない物件となることが想定されます。
3.「すぐには顕在化しない」「すぐそこにあるリスク」
現状として、マンションについては流通(賃貸・売買)業界においても、管理業界においても、その評価について深い分析が体系化されていません。現在進められているAIによる価格推定は、物件流通価格という観点から、その資産性を見る際に非常に有用、かつ大きな手がかりになりますが、そこに管理に関する事項(各種リスクを含む)や、物件固有の事項をどのように掛け合わせていくかが次の課題となります。
周知の通り、都市部におけるマンションは、非常に重要な居住形態の一つとなっています。国土交通省の発表によると、2017年12月末時点で約644.1万戸のマンションストックに、実に国民の約1割に該当する約1,501万人が居住しており、都市居住のスタンダードスタイルといっても過言ではないのが実際です。(出典:国土交通省「分譲マンションストック戸数 2018年5月24日更新」)
このような状況下で人口減少局面を迎えた場合、どのような事態が生ずるのか・・・・そこに生活し、そして居住し続ける方がいる以上は、前述したように世間で一部騒がれている程、「マンション大崩壊」のようなセンセーショナルな事態が直ちに顕在化するとは考えにくいかとは思います。ただし、そこに居住されている皆様や、そこに居住するはずの皆様が、当該マンションに「居住しない」状況が生じた時、比喩的に言い換えればマンションの「新陳代謝」が止まってしまった時、間違いなくその崩壊が発生します。そして真綿でゆっくりと首を締めるように、しかし確実にその時は迫っています。
4.CoAMを必要とした「土地」×「建物」×「管理」の複雑性
マンションには「土地・建物」にさらなる複合要素である「管理」が掛け合わされることから、その不安定性を分析する上でコンドミニアム・アセットマネジメント(Condominium Asset Manegement/CoAM)という概念が必要とされました。
マンション所有者が物件のリスクをきちんと把握した上でマンションを保有すれば、時が経っても「こんなはずではなかった」というような事態は無くなります。リスクはどのようなアクションにも発生しうるものですが、そのリスクが自分の許容範囲内であるか否かが一番必要です。許容できるリスクがきちんと見えていれば、購入物件がローン残債以下でしか売れないため、売却もできず路頭に迷う・・・等の目も当てられない事態は避けうるはずです。
「今まで」の、そして「これから」のマンション管理がきちんと分析できれば、土地・建物の資産価値の適正評価・把握につながります。また、管理に価値が見いだせれば、より合理的な管理が明確になり、リスク有無の把握のみならず、そのリスクすら軽減できるかもしれません。そして、各管理組合が働きかける余地のある、管理における具体的アクションを分析するという観点から見ても、コンドミニアム・アセットマネジメントという概念の持つメリットは大きいといいうるのです。
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